認定こども園と義務教育学校が一体となり、0〜15歳のシームレスな学びを目指す「学び舎 ゆめの森」。双葉郡で生まれ育ち、認定こども園のデザイナー(保育教諭)1年目の青田このかデザイナーに、ふるさとへの思い、デザイナーとしての日々の保育での気づきや、子どもとの関わり方について、お話をお聞きしました。
※「学び舎 ゆめの森」では保育教諭を「デザイナー」と呼んでいます。
プロフィール
青田 このかデザイナー (認定こども園 4歳児担当)
双葉郡出身。小学3年生まで双葉町で過ごし、東日本大震災により避難。中学校の職場体験で幼稚園を訪れたことをきっかけに保育の道へ。
幼少期の楽しい思い出が詰まった双葉郡に戻って働きたいという思いから、学び舎ゆめの森 認定こども園のデザイナー職に応募し、令和6年4月に入職。現在は4歳児を担当している。
ふるさと、双葉郡への思い
―ゆめの森に勤務されるきっかけを教えてください。
小学校3年生まで双葉町で育ったので、「双葉郡に戻って子どもと関わる仕事がしたい」、と思っていました。震災前は家族だけでなく、おばあちゃんもいとこもみんな双葉町に住んでいて、避難でバラバラになって。時間が経っても、ふるさとでの楽しかった思い出は強く残っていて、双葉郡に戻りたいという気持ちがありました。今は、いとこたちもみんな双葉郡に戻ってきているんです。
学び舎ゆめの森のデザイナー留学(職場見学会)に参加した時、この学校が大切にしている「一人ひとりの子どもを大切にする」という姿勢と、「0歳から15歳までが共に学ぶ」と聞いて、共感しましたし「楽しそう」と思って、応募しました。
―保育教諭を目指したきっかけはどんなことでしたか?
幼稚園の頃、優しい先生が大好きで、憧れがありました。中学校の時の職場体験で幼稚園に行き、そこからさらに興味が湧いてきました。とにかく子どもが可愛かった。それまでは子どもと接する機会があまりなかったので、むしろそれが新鮮で、子どもと関わる仕事がいいな、と思い始めました。

子どもの「熱中」する姿を大切にする保育
―学び舎ゆめの森でデザイナーとして1年目ですが、実際に保育の仕事をしてみて、どうですか?
学び舎ゆめの森の認定こども園では、「あそびに熱中する子ども」というのを最も大切にしているので、それに向けて試行錯誤している感じです。
「これでいいのかな」とか「合ってるのかな」とか色々と迷うこともあるんですが、マネージャー、周りのデザイナーの方々にもアドバイスをもらいながら、やり方を変えてみたり、試しています。
例えば、「あそび」と、単に「おふざけ」している姿は違う、と先輩のデザイナーの方からお話を聞いて。そのラインがまだ自分の中であやふやな部分があるんです。子どもたちの様子を見ていて、これは「あそび」なのか?そのままにしていいのか?とか、迷うこともあります。
―そのような時はどうしていますか?
他のデザイナーの方たちに相談してアドバイスをもらいます。ここは、子どもについて一緒に考えてくれる人がたくさんいるので、それがすごく有難いです。
例えば、一つのあそびに集中せず、色々なあそびを点々として、あそびに没頭できていないかな、という子が何人かいたとき、どうすればいいか先輩のデザイナーに相談したんです。そうしたら「まずは一人に注目して、一人ずつ関わってみたら」とアドバイスをもらって。まず一人の子に集中して関わってみたら、その子のあそびが3日間くらい続いたんです。砂場で料理を作ったり、大きなケーキや、船や城を作ったりして、砂場でのあそびに熱中しているのを見て、「やったー、続いてる!」って嬉しかったです。

―それは嬉しいですね。熱中する姿に向けて、どんな関わり方をしていますか。
あそびの始まりは私も一緒に遊びます。声をかけたりしながら、子どもがあそびに熱中してきたら、徐々に離れて、集中を切らさないように見守る、という感じです。
例えば先ほどの砂場あそびのケースだったら、最初は私も一緒に遊んで、「料理を作って、みんなに食べにきてもらおうか」と声がけしたり。そうすると「たくさん作る!」となって、没頭モードに入ってきたら、少し離れて見守る、という感じです。
こうして子どもたち一人ひとりを見取りながら関われるのは、デザイナー同士の助け合いあってのことだな、って。例えば「この子は外に出て遊びたいんだな」とわかった時、外に出してあげたい。そういう時、「お部屋の中の子たちは見ておくから」など、先輩のデザイナーが声をかけてくれたりします。学び舎ゆめの森では、担任のクラスはあっても、デザイナーみんなで子どもたちみんなを見るので、「ちょっと見ていて」の声かけがしやすくて、やりやすいです。
今は、好きなことを存分にやってほしい
―デザイナーとして大切にしていることはありますか?
子どもを「誘導」したくないなと思っています。子どもたちのありのままを大切にしたいので、なるべく私の思いで誘導せず、子どもには好きなことを存分にやってほしい。「この子のやりたいことなのか、私がやらせたいだけではないのか」をいつも考えています。
私はつい「まとめよう」としてしまう癖があるんです。子どもたちが一緒に動いてくれると見守りやすいですし、特に外遊びなどで見えないところが出てくると不安なので、「ちょっとそっち行かないで」と言ってしまうこともあります。でも、それは私の都合なのか、子どもの安全のためなのか、常に考えるようにしています。
幼児の今が一番、自分の好きなことができる時期だと思うんです。小学校へ行くと、ある程度教科などで制限される部分も出てくると思うので、今はとことん自由に遊んでほしいと思っています。
例えば、保護者の方からお休みの電話をもらう時、「今日も行きたがってたんです」と聞くと、嬉しくなります。ここでのあそびを楽しいと思ってくれているのかなって。

0歳から15歳が混ざり合う環境で生まれるおもしろさ
―認定こども園と義務教育学校が一体になっているゆめの森ならではの良さはありますか?
認定こども園と、義務教育学校の子どもたちの関係が自然と混ざり合っているところです。休み時間になると、特に1・2年生の教室が近いせいか、中庭で一緒に鬼ごっこをしたり。こども園の子たちが外で工作していると、「何してるのー?」とやってきて関わってくれたり。
年中・年長の子たちがカエルを5匹くらい捕まえてカゴに入れてきた時は、小学1年生がカエルの飼い方を教えてくれたんです。認定こども園で熱中して遊んで小学生になったお兄さんが、認定こども園の子どもたちに熱中する遊び方を教えてくれているんです。 芋掘りの後に焼き芋パーティーをした時も、こども園の子どもたちは焼き芋を洗ったり準備や、うちわで仰ぐことを担当して、小学生も手伝ってくれました。小学生、中学生の子どもたち、デザイナーたちもみんなで食べて。本当にごちゃまぜに混ざり合って、楽しかったです。

体全体を使って思い切り遊ぶと、私も楽しい
先ほどお話ししたように「ちょっと見てて」と助け合える環境ですし、「わからないことはなんでも聞いてね」と言っていただけているのでとても働きやすいです。
子どもたちの昼寝の時間などに、事務作業をしながら雑談することもあります。その日の保育写真を見ながら「この時面白かったね」とか、「今日こんなことがあったんです」と何気なく話したり。雑談があるから、何かあった時も相談しやすいです。
―これからチャレンジしてみたいことはありますか?
肌着になって何も気にせず泥遊びや絵の具で体全体を使って思い切り遊ぶような活動をもっとやってみたいです。私自身も楽しいですし、何も気にせず熱中して遊べる経験をどんどんさせてあげたいです。
(取材後記)
双葉郡への強い思いを胸に、学び舎ゆめの森で子どもたちと関わる青田このかデザイナー。「子どもたちのありのままを大切に」という言葉や、日々試行錯誤しながら保育に取り組む姿が印象的でした。その「もがき」の中にこそ、成長の種があるのだろうと感じました。デザイナー同士の良好な関係性の中で、互いに支え合いながら学び続ける青田デザイナーの今後の活躍に注目していきたいと思います。